日々のつれづれ

詩や日々の出来事を心の趣くがままにUPしています。

『CARUSO』

『CARUSO』                  なゆた超訳


海は輝き
風が吹きすさぶ
ここソレント湾の古びたテラス


男は在りし日の恋人を抱きしめ
涙にくれていた


声の調子を整え
歌の続きを唄い始める



僕はあなたが好きだ
とてもとても好きだ
体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまう



海の向うの明かりを見て
アメリカでの夜を思った


しかし、それは漁師の漁火
船尾を洗う白い波でしかなかった


妙なる調べが
また彼を苦しめさいなむ


やがて雲間から月が射し
その美しさに死さえも甘美に感じ


恋人を見つめるように
海のように碧い姿に


涙が止めどなく溢れ
溺れてしまうほどに悲しい



僕はあなたが好きだ
とてもとても好きだ
体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまう



舞台の上では
少しの化粧と身振りで
誰でも別人になれるのに


アメリカでの
あの華やかな舞台ですら
今は些細な事におもえる


船尾を洗う白波を見つめながら
我が身を振り返っている



僕はあなたが好きだ
とてもとても好きだ
体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまう


僕はあなたが好きだ
とてもとても好きだ
絆は体の中をめぐる熱い血さえ溶かしてしまう


                   なゆた




※※※ある舞台役者の物語