『幸福のモチーフ』

満月のように
どこも欠けるところのない
完全な幸せなど在りはしない

満月すら
時の流れに逆らえず
満ち欠けするものを内包している

存在の根本は
影と光とのコントラストであり
そこにこそ本質がある

罪深く無くば
正義のなんと薄弱な事か

憎しみの表裏に
愛が見え隠れもする

これこそが自然の摂理

哀しみの世界に笑いはなく
笑いのない生涯に許しはない

饒舌なことばに
真実がないように
寡黙な智慧には勇気がない

落胆と絶望を抱く時
来るべき朝日に
すべてが洗い流されることを願う

幸不幸の
繋ぎ合わされた鎖を解くものは
永遠に流れる時という癒しの季節だけ

幸福のモチーフは

慟哭する魂が
歓喜を奮い立たせる香辛料

男あらば恋を奏で
女はその音色に酔いしれリズミカルに舞うこと

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なゆた