日々のつれづれ

詩や日々の出来事を心の趣くがままにUPしています。

『逃避行』夢アルバム㊻

『逃避行』


底冷えのする朝
京都に居た


どうして
ここを選んだのか 
ぼんやりと思いながら


ただ
現実から逃れたかった


きっとどこでも良かったんだと思う


人影もなく
シーズンを過ぎた観光地は 
心を閉ざすに都合がよかった


大覚寺を越えて 
ひなびた北嵯峨野の
寺院にたどり着く


人生の終着点に着いたかのように
鉛のように心が重い


慰めるものなどないことを
うすうす気付きながらも
歩いてきた


抹茶を頂きながら
案内の方と話す


 今の時期 
 見るものも無いお寺ですから
 こられる方も少ないかと・・・。


それでも一人二人と
訳有りげな人に出会う


目を合わすでもなく 
心の中が判るような気がする


同じ悲しみの
匂いがするから


思いの丈を綴るノート
そこには、こう書かれていた


「そっとその意地を私の心にすててください。
 苦しむあなたをみているのがつらいのです」


その寺の名は、もう覚えてはいない


                   なゆた