日々のつれづれ

詩や日々の出来事を心の趣くがままにUPしています。

『こころの棲家』

『こころの棲家』


闇をさ迷うことに慣れっこになった瞳は、
太陽の光を避けるのでしょう
胸に輝く微かな光だけが道しるべ


出口のない迷路
遠くて暗い路
溜息を漏らしながらも歩いている
見覚えのある所を何度も何度も通っている
行き場のない嘆きがいつもお供


『おいおい』
『いつまで、こんな暗い所でぐずぐすしてるんだよ』
『お前の不甲斐なさには呆れるよ』
『俺が何度も言っただろうが』
『友情なんて、結局は利用するための方便だって』
『理想なんて、妄想の産物だって』
『また、痛い目にあってこんな穴倉に潜ぐり込んで』
『自分を虐めることが好きなんだよな・・お前は』
『それでいて、いじけてやがる』
『そんなことなら、友情も理想も捨てりゃ良かったんだ』
『人間なんて、身勝手なもの』
『自分の不利になると簡単にそんなもの吹っ飛ばしてしまう』
『そんなことも判らないのか・・とんだ甘ちゃんだな』


そうだよな~
ぼくには、このじめじめした虚ろな場所がぴったりだ
太陽の光にいつも後ろめたさを感じている
それは、友情を信じきれない自分だったり
理想を振りかざしながら
出来ないと心のどこかで諦めている自分
それなのに、期待してしまう悪い癖


ぼくにだって、あったんだよ
青空の下で、屈託のない笑顔で飛び回ってた時が
友情や愛が永遠に続くと信じていた頃が
だけど、いつもうまくいかなかったんだ


何度、同じ失敗を繰り返せば
この抜け道の無い世界から出ることが出来るのか
仕方なく、重い足を引きづりながら
また歩いてる



誰もいないはずの迷路に蛍火が薄っすらと輝いている
ぼくは、おぼつかない足取りで近寄って見る
蛍火の中、ぼーと幽霊のような顔 顔 顔
こいつらも、この迷路の住人だったのか


口々に、うわごとのように言葉を吐き出す


『信じた人に裏切られた』
『夢にやぶれて、もうどうでもいいんだ』
『才能がなくて自分が嫌になる』
『生きてる理由が判らないでいる』
『自分のおろかさが嫌で嫌で・・・』
『明日に希望がない』
『・・・・・・』 


あぁぁ、ぼくと同じ匂いがする
この人達も、人生に失望し色々なものを失ったんだ
そして、立ち直れずに
こんな暗くて陰気な洞窟の住人になってたんだ・・・
みんな、一人で解決できない重荷を背負って
いつ出れるかも知れない闇を一生懸命歩いてる
ほおって置くと壊れそうなので
いつもうつむきながらも歩いているんだ


それでいて胸にぼくと同じ光を持つ人ばかり
集まると段々強い光になっていく



そして静かな声が聴こえた


この人達は
『人を愛して、信じ続けた人』
『夢を諦めなかった人』
『自分の才能を見つけられない人』
『穏やかで自らを省みる人』
『希望を諦めなかった人』
『人の悲しみを自らに負う人』


未だに、これらを探し続ける人達の群れ
優しさが、わが身を傷つけることを知った人達


一人では、ぼやけて顔すら見えない皆が
こうして集まると、若々しい魂の持ち主であることを感じる
一人では、暗く何ものをも照らせない光が
こうして集まって新しい光となる


今は、辛くて苦しい闇でも
手を繋ぎ明日を夢見て、そして涙を拭くことも無く
一緒なら歩めるはず
一緒ならこの暗い洞窟から、日のあたる場所に
温かな想いが皆の心を包んでいく
いつまでも
どこまでも、共に歩んで行こう


太陽の光が皆に降り注ぎ、生きている事を実感し喜びあえる未来まで


                                                                  なゆた